諸行無常」カテゴリーアーカイブ

神無月2015

神のいない月がやってきて またしても猫たちは海を見ている。 石造りの建物からは 海を見るしかすることがないのだ。 光と それから影に分かれて 対話するのが季節というものだろう。 何を求められているのか 絶対に考えてはいけ … 続きを読む

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色彩

光の展示を見て歩く。 色の感じが違うのは 建物の形状と密集の度合いが 違うからなのだろう。 どこまでも続く石畳の上を 歩きながらそんなことを考えていて、 これは見えるものだが、 見えないものも このように違っているのでは … 続きを読む

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川を見に行く

遠い街に行っていた。 時計を七時間巻き戻して 今日をやり直す。 高台に登ってアディジェ川を見た。 太陽はまだ、光を強く放っていたけれど、 もう建物の影が川に落ちていた。 なぜ行くのですか 人はそう問うけれど、 私にはどん … 続きを読む

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遠くまでゆく

ピアノって記号は 静かな音を出すっていう意味で、 弱く弾くって意味ではないんです。 分かりますか。 師匠はそう言った。 楽器を習う、ということは 楽器がよく弾けるようになる という以上の意味があると いつも思う。 「習う … 続きを読む

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九月の雨についてうたう歌を いくつか知っている。 境目はいつも穏やかではすまず、 冷たさと熱さの駆け引きを繰り返す。 どちらが負けるか 分かっている戦いだけれど、 私には落ちてくる雨を 傘でよけることしかできない。 何も … 続きを読む

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肉屋

霧のような雨は 降るというよりも漂っている。 人々は 傘を差したり差さなかったりして 緩やかにカーブを描いて下る道を 歩いてゆく。 日曜日には肉屋が閉まっている。 そんなことを私は知らなかった。 その通りには三軒の肉屋が … 続きを読む

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ポエジー

必要か必要じゃないかじゃなくて 詩情というものは 最初からあるんですよ。 と詩人は言った。 あるものをどのように捕まえて かたちにするのかということ そもそも創作というのは そういうことなのだと思った。 無いものを作り出 … 続きを読む

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警報

雨は、 突然降り出すのではない。 ずいぶん前から準備をしている。 空の向こう側に もくもくと立ち上がる積乱雲を 君は見ただろうか。 それはやがて地表に落下して 私の足を濡らすことになる。 未来は ある程度予測できることで … 続きを読む

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寿命

風の音が聴こえないんです、と滝沢は言った。 風の音って? ファンが回って風が出るじゃないですか。 あぁ冷却ファンのことね。 私は排気口に手を当ててみた。 確かに空気は流れていなかった。 ばらしてみるか。 私たちは、ねじを … 続きを読む

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葉月

およそ三十くらいの数字が書いてある 紙をめくると 八月の世界が目の前に現れる。 そこにはエジプトの猫が佇んでおり 足をそろえて海を見ている。 いや、人を見ているのかもしれない。 魚を探しているのかもしれない。 夏は塩の匂 … 続きを読む

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