諸行無常」カテゴリーアーカイブ

小春日和

南側のサッシに陽が当たると 彼は、メキ、メキ、と声を上げる。 あれは、伸びをしているんだよ と私の中の誰かが言う。 人間の形をした私もまた ベランダで伸びている。 太陽というものはそうやって 様々なものを伸ばすのだろう。 … 続きを読む

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わたしはどこにいるのか

この頃、遠く感じるようになった。 どんどん心が体から離れてゆく。 わたしはいったいどこにいるのかというと 大脳の隅の一握りの細胞の中である。 わたしがいなくても この体は作動し続けるように できているはずだ。 わたしの体 … 続きを読む

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浮遊

柿の木の根元のアスファルトに 秋が散らばっていた。 そうか君はもう終わりなのか と思う私はマフラーを巻いている。 絶対的は精神が物質を作るのではなくて、 物質が集まってくることによって 精神というものが生まれるのだと 思 … 続きを読む

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ふぐ

きみは毒を持っている。 肝の部分にたっぷり持っている。 食べると痺れて死ぬかもしれない。 でも、綺麗にさばいて 取り除いてしまうから。 肝は鍵の掛かった箱に しまわなければならないらしい。 猫が食べると 命を落とすからだ … 続きを読む

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レディオ体操

レディオ体操が ダンスのように見えてきた。 だってあれは最初からダンスじゃない という人がいるかもしれないけれど 「体操」という言葉が 芸術的な側面を剥ぎ取って 医療的な何かのように 見せていたものだから私は 勘違いして … 続きを読む

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秋はいつ終わる

バスは乗り心地が悪かった。 低いギアのまま ぎくしゃくした走りだった。 バックミラーには 運転手の顔の下半分が映っていた。 顎は細く、唇は薄かった。 うっすらと髭が生えていた。 目が見えない相手を 睨むことができないのは … 続きを読む

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立冬である。 私は冬を 呼んだ覚えはないけれど、 冬は呼ばれなくとも勝手にやってくる。 そして雨が降っている。 それは出遅れていることの しるしなのかもしれない。 小さい頃は夜が好きだった。 ほんものの夜だったからである … 続きを読む

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霜月

太陽に匂いなどないはずだけれど、 太陽の匂いを知っているような気がする。 文化の日。 空は青かった。 こうして高くなってゆくのは 空なのか私なのか。 湿度計を見ると針は 三十パーセントのところを指している。 どうりで足が … 続きを読む

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ディスタンス

膨らんだ月が 空にあることを どうしたものかと ベランダから見ていると 雲がそれを隠す。 取り出したものが おかしなものだったなら それは取り出し方が 悪いのだと思う。 箱の中では確かな形を持たず、 取り出す時に形は作ら … 続きを読む

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やさしさ

「やさしい」ということはつまり 「かんたん」ということです。 ですから、ひとは 「かんたん」なものに対して 「やさしく」できるのでしょう。 つまり、やさしくされるということは かんたんだと思われているということです。 つ … 続きを読む

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