諸行無常」カテゴリーアーカイブ

如月

二月になった。 冷たい季節。 しかし、今年は風の日が少ないと思う。 北に向かって漕ぐペダルが重くない。 それが私にとっては 救いである。 世の中には 大きな救いと小さな救いがあるが 私そのものが救いに変わる日が来るだろう … 続きを読む

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零下

つめたい夜が続いている。 丸い月が冷えた街を暗く照らして 靴の音が変わったのがわかる。 雪など降って、 路面が凍結すると、 人と地球との関係は あっという間に険悪になる。 その程度の危うさで 世界はできあがっている。 私 … 続きを読む

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エンタングル

ひとりになりたいから旅に出る と、その人が言うのを聞いて、そうなのかと思った。 私は旅に出なくても ずっとひとりだからである。 もちろん人は、自分の思うように生きていれば いいのであるから、かまわないのだけれど、 何かど … 続きを読む

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明け方

雪が降ったのだと予報士は言った。 わたしには見えなかった。 回転する洗濯機の鼓動を聴いていると、 朝は赤くやって来た。 焼却炉の煙は、 いや、蒸気かもしれないけれど、 まっすぐ昇ってゆく。 唇が外気を感じて、 言葉は失わ … 続きを読む

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現実味

年が明けると そこには新しい年の世界が広がっているが、 私には現実味がない。 ひとは常に明けており、 常に新しい世界が広がっている。 だから、何かが新たに明けた気がしないのだ。 それが、私にとっての現実味というものだろう … 続きを読む

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LP

この頃またレコード盤を聴いている。 時々、中古レコードショップに行って 古いレコードを買って来たりしている。 最近、アナログレコードが流行っているとニュースで聞いた。 新譜をレコード盤でも出すアーティストが増えているのだ … 続きを読む

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睦月

この頃、突然日が暮れるような気がする。 以前からこのような日の暮れ方だっただろうか。 何だか時間の感覚がおかしくなったのかもしれない。 とにかく太陽をどぼんと沈めるように 日が暮れてしまうものだから 私は光と時間の感覚が … 続きを読む

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黒い海

「見当たりませんね」 医師はそう言った。 私は彼の手首に巻き付けられた 高級そうな時計を見ていた。 レントゲンの光を 遮るものはなく 黒い海が広がっていた。 「溶けたってことですか?」 「あまりありませんが、そういうこと … 続きを読む

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stone

水の流れるところには石があるものだ。 それが自然なことかどうか 私には分からないけれど 私の中にも水は流れている。 先週の火曜日 夜中にやってきた腹痛は そう簡単に去ってはくれなかった。 もしかして、これは駄目なやつでは … 続きを読む

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PM2.5

「北京は盆地のようになっているので、  流れて来た公害が溜まってしまうんですよ」 張さんはそう言って空を見上げた。 深い霧のように見える靄は 霧ではなくて公害なのである。 あたりはどんよりとした暗さで 靄を通して太陽の形 … 続きを読む

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