諸行無常」カテゴリーアーカイブ

調律師

雨の日に調律師はやって来た。 「特に他の楽器と合わせることがなければ  少し高めに合わせておきますね」 と調律師は言った。 チューニングハンマーとフェルト それからスティックを差し入れて 調律師が鍵盤を叩くとピアノは 澄 … 続きを読む

カテゴリー: 諸行無常 | 調律師 はコメントを受け付けていません

ピアノ

ピアノを買った。 それもひとつのあこがれであった。 男たちは二人で それを横にして運び込んだ。 ドアを外して回転し、 それからそっと起こした。 ピアノは私のそばに 静かに配置されたのである。 何のためにピアノを買ったので … 続きを読む

カテゴリー: 諸行無常 | ピアノ はコメントを受け付けていません

あこがれ

弥生、三月が進むなら 春を待つ人々の気持ちにもきっと 光が増してくるだろう。 日本人は「あこがれ」の強い民族です そうテレビの四角い枠は言った。 私たちは強い「あこがれ」によって 突き動かされているのであるから どんなこ … 続きを読む

カテゴリー: 諸行無常 | あこがれ はコメントを受け付けていません

夜について

夜はもっと静かで 夜はもっと冷たく 夜はもっと個人的で 夜はもっと秘めていた そう思ってきた。 酔った深夜の路上で ふと気付くと私は 夜からはみ出していた。 夜はもう私のために存在しない。 裏切ったのか 裏切られたのか … 続きを読む

カテゴリー: 諸行無常 | 夜について はコメントを受け付けていません

春を待つうた

なにしろ春が来ようというのだから 雨が降ったり、風が吹いたり、 光が降り注いだりするのも当然の ことだろうと私は思う。 公園には沢山の人が溢れていて 手を繋いで幸せそうに歩いていたりするけど、 池には水が無く、 魚は泳い … 続きを読む

カテゴリー: 諸行無常 | 春を待つうた はコメントを受け付けていません

こころ

できないことを できるようにしたり、 苦手なことを なんとか克服しようとしたり、 そんなことを 長い間してきたものだから できることは何だったか 得意なことは何だったか 分からなくなってしまった。 一般的であることを 誰 … 続きを読む

カテゴリー: 諸行無常 | こころ はコメントを受け付けていません

博士

春の嵐になるでしょう 予報士はそんなことを言っている。 私は吹き飛ばされるものはなくて 私自身が空を舞うものであるから 怖れはないのだけれど。 人の幸福とは いかに繋がるかということです と、博士は画面の中で言った。 で … 続きを読む

カテゴリー: 諸行無常 | 博士 はコメントを受け付けていません

如月

二月になった。 冷たい季節。 しかし、今年は風の日が少ないと思う。 北に向かって漕ぐペダルが重くない。 それが私にとっては 救いである。 世の中には 大きな救いと小さな救いがあるが 私そのものが救いに変わる日が来るだろう … 続きを読む

カテゴリー: 諸行無常 | 如月 はコメントを受け付けていません

零下

つめたい夜が続いている。 丸い月が冷えた街を暗く照らして 靴の音が変わったのがわかる。 雪など降って、 路面が凍結すると、 人と地球との関係は あっという間に険悪になる。 その程度の危うさで 世界はできあがっている。 私 … 続きを読む

カテゴリー: 諸行無常 | 零下 はコメントを受け付けていません

エンタングル

ひとりになりたいから旅に出る と、その人が言うのを聞いて、そうなのかと思った。 私は旅に出なくても ずっとひとりだからである。 もちろん人は、自分の思うように生きていれば いいのであるから、かまわないのだけれど、 何かど … 続きを読む

カテゴリー: 諸行無常 | エンタングル はコメントを受け付けていません