投稿者「ino」のアーカイブ

投棄

このゴミを出した方はお引き取りください。 と書いた黄色い紙が貼ってあった。 集積場の前にそのゴミ袋はぽつんと置いてあった。 見覚えがあった。 それは数日前に私が出したゴミ袋だった。 黄色い紙には細かいチェックシートが付い … 続きを読む

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五の月

ヴェネツィアでは猫をあまり見ませんでした。 それは猫がいないということではなくて、 単に私が出会わなかったということです。 水辺に佇む猫は魚のことを考えるでしょうか。 五月というのは 今年になってから 五番目の月だという … 続きを読む

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無題

特に何というわけではないが、 このところ あたふたとしている。 あたふたとした毎日である。 言葉が少ないことは よいことではないと思う。 そうして春の中である。 たくさん持っているつもりはないけれど、 日々、少しずつ持ち … 続きを読む

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はざま

季節の隙間に 落ち込んだような気がするけれど、 冷たさと 暖かさが出会うときには 穏やかではいられないものなのだろう。 私は争い事が好きではない。 しかし、それを避ける手立ても 持ち合わせてはいない。 ただじっとして 通 … 続きを読む

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ふちのこと

携帯する機器で大切なことは 「ふち」なのではないかと、この頃思った。 スマートフォンのために ずいぶん剛健な感じのケースを買って、 それを取り付けて使っていたが、 これは違うというような気持ちが 毎日蓄積されていって、あ … 続きを読む

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散らない桜はないだろう。 強い風に巻き上げられて 高く、高く飛んだピンク色の花びらが 部屋の奥の方まで入り込んでいた。 あれこんなところにまで 私はてのひらに花びらをのせて 息を吹きかけてみる。 ずうっと昔、 田舎に居た … 続きを読む

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タイプライター

タイプライターが好きだった。 段差のあるキーを 指を立てて打刻するときの あの感じが好きだった。 英語が好きだったわけではなかったが、 中学生のとき、 英語の勉強に大変効果的 などという宣伝文句を親に投げて 自分の元に呼 … 続きを読む

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単なる電気信号

この頃はネットの中にも桜が咲いており、 私はネットの中で花見をする。 散らない桜はないのであるが、 ネットの中の桜はいつまでも咲いている。 いつまでも色あせないということは とても素晴らしいことであるが、 ある程度の気味 … 続きを読む

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ひとつだけ

春ですか、そう訊くと そうじゃないの、と誰かが答える。 季節の区切りは明確ではなくて ぼんやりしたものである。 わたしは明解さを学んできたが 世の中というのは本来 不明確なことでできているようだ。 ある日、 ある公園の … 続きを読む

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かたち

君は 猫のかたちをしてそこにおり、 猫のように動いている。 私は 人のかたちをしてここにおり、 人のように動いている。 それはほんの わずかな違いである。 両足をそろえて 打ち込まれた杭の上に君は座っており、 何か言いた … 続きを読む

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