投稿者「ino」のアーカイブ

ひとりのメソッド

ひとりで暮らしている。 毎朝、味噌汁を作る。 毎朝、洗濯をする。 気楽なんかじゃない。 自分の形が時々分からなくなる。 「ものさし」というものを わたしは持っていないから。 毎日一枚、古いジャズかポップスのレコードを聴く … 続きを読む

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キウイフルーツ

キウイフルーツの旬は冬だそうだ。 長い間夏だと思っていた。 ずいぶん昔のこと、 ある日母が近所でキウイの苗木を貰ってきて 家の前の畑に植えた。 キウイはぐんぐん伸びて、そして実を付けた。 「あぁなったなった」 母はそう言 … 続きを読む

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追憶

どんなに嬉しかったことも どんなに悔しかったことも どんなに悲しかったことも 僕はきっと忘れるだろう。 そうしてそれらはただ 天井の染みのようになっているだろう。 僕はただ黙って それをいつまでも眺めているだろう。 それ … 続きを読む

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文月

とても暑い。 それが七月の洗礼というものだろうか。 スーパーにバジルの葉は無かった。 ジェノベーゼを作ろうと 心の中で決めていた私にとって それは大きな痛手であったが、 レシピというものは ある一方方向からの見方なのであ … 続きを読む

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神様

もしも、神様と渋谷あたりで 待ち合わせをすることになったとして、 待ち合わせ場所をちゃんと決めなかったから 近くまで来たら電話をかけて 「もしもし、神様、今どこですか」 と私は聞くだろうか。 きっと私は神様に電話番号を訊 … 続きを読む

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ペットボトルは机の上で汗をかいている。 それが流れとなって、コースターを濡らす。 これは水である。 この水はどこから来たのかといえば、 私が吸っている私の周りにある 六月の大気に含まれていたのである。 「大気」 ただペッ … 続きを読む

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倍音

鬱陶しい空と湿った風 六月のページが過ぎてゆく時、 広い河の淵に立って 流れてゆくものをただ無言で 受け入れているような気分。 歌でも歌えればいいのだけれど。 アコースティックギターの弦を 新しいものに張り替えた。 前に … 続きを読む

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主人公

私は果たして私の物語の主人公なのだろうか そんなことを時々考える。 作家は言った。 主人公には嫌いな人を据えることが多い。 なぜなら、好きな人が主人公だと やがて正義を語り始めるからだと。 正義は物語を破壊し胡散臭いもの … 続きを読む

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人は歌うように話している そう読んだ時、やっぱりと思った。 その言葉がいつまでも残っている。 音韻というものをやりとりするからこそ 人は気持ちを伝えられるのだと続いていた。 人工的に合成した音声で 会話をしようとする場合 … 続きを読む

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水無月

「梅雨に入ったとみられる」と 予報士は曖昧な表現で雨の季節を告げた。 暖かさと冷たさの境界線上で 私は窓を薄く開け、それを確かめる。 ゆうべ蛍を川に放ったと聞いたので 歩いてみたけれど、 二〜三匹しか光を見つけられなかっ … 続きを読む

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