おくりもの

四角い画面の中で
雪がたくさん降りますと
男も女も言っていたけれど、
深夜に窓を開けて
辺りを見ると
雪も雨も降っておらず
自転車で坂道を下る青年は
傘もささず、合羽も着ておらず
なぜか音もなく
街灯の向こう側の闇に
消えていった。
それもいいだろう。

歳を取ると、何かと説教が多くなり
話していても、これはこうあるべきとか
狭い価値観をぎゅうぎゅう押しつける人が増殖する。
そういうのは嫌だ、まっぴらごめんだと
若人の頃ずっと思っていたから、
自分はそういうジジイにならないように
しようと常々思っていた。
けれど最近、すでに自分が
時々、それに近いようなことを言っているのに
気付くことがあって、愕然とする。
なんとまぁ、抗えないことというのはあるものだ。
しかし、ひとつだけ分かったことがある。
年寄りが価値観を押しつけてくるのは
積み重ねによるものではまったくなくて
比較的最近、思いついたことなのだ。
古い船も新しい海に出るのである。
加齢によって重みがあるように感じられたり
するけれど、そんなことは関係なくて
単なる最新の思いつきを述べているにすぎない。
言う方も、聞く方もそう思えばいい。
世の中は平らな方が楽しい。

カテゴリー: 諸行無常 パーマリンク