まるでバケツで水を掛けるように
バシャバシャと雨が窓を洗って、
隣の家のテレビアンテナが
折れそうになるほどしなっていた。
台風というのはそういうものだった。
もう随分、そういうことを忘れていた。
河沿いの町で育った。
何処に行くにも、堤防の道を通って
行かなければならなかったから
流れる水をいつも見ていた。
穏やかで、光を反射してきらきらと
輝いていることもあれば、
土色の水がごうごうと速いスピードで
流れていることもあった。
いつも河の音がバックグラウンドに
流れていた。
しかし、河の側で暮らしている時は
その事に特別な感情というものは
持っていなかった。
それは単に河で、そして水だった。
体の中を流れている血液のように
何も気にならなかった。
そのことを、とても懐かしく思う。
そして、それが暮らすということで、
自分の意識の向こう側に物事を
置くということなのだろう。
そういうことを、自分は求めているのだろう。
そう、思った。