とおりがかり

五月の終わり。
春でもなく、夏でもない
とても中途半端な季節が
本当はとても良い季節なのだ
ということを知っている。
陽射しが柔らかで
風があまくて
すこやかな気持ちになるということ。
しかし、現実というのは
とても理不尽にできている。
ぐるぐると円を重ねた台風が
この季節にやってくるなんて
想定外のことでしょう。
しかし、世界はもはや想定外のことばかりで、
想定というのが、いかにちっぽけであるか
少しずつ分かってくる。
何事もすべて途中で、
停止することなどないのだから
なにもかもが移り変わる方向に進んでゆく。
インターバルタイマーで撮影した
林檎のように
それは希望で、恐怖で、絶望でもある。
停まることも、下車することもできない
汽車に乗って、どこか遠い所
あるいはとても近い所まで
ゆかなければならない
そういうことになっている。
せめて、風光明媚な景色を
見ることができれば
いいのだけれど。

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