まぐろのきもち

まぐろは停まると死ぬという。
なんだか忙しない魚だなと思っていた。
しかし、あれはそういう性分なのではなくて、
構造的にそういうふうになっているそうだ。
他の魚のように、エラをぱたぱたできないので、
游ぐことによって、海水を口からエラに流して
呼吸しているのだという。
まぐろにとって、游ぐことは呼吸なのだ。
游いでなければ呼吸が出来ず死んでしまう。
考えてみれば人間だって似たようなものだ。
横隔膜をつねに引っ張ったり縮めたりして
風船のように肺を膨らませたり萎ませたりして
つねに空気を取り込まなければ生きていられない。
しかし、そのような生命の維持に関わるようなことは
通常、心で考えなくとも意識の外側で自動的に
やってくれるようになっている。
そう、自動運転なのだ。
それって、考えてみるとものすごく不思議なことだ。
放っておいて何も考えなくとも、生命は勝手に維持される。
いったい何のためにそうやって、この体は
温もりを保つのだろう。

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