スーパーに行ったら入り口の果物コーナーに柿の小山があった。
「はつものを食べたら笑わなきゃなのよ」
小枝子はそう言って、あひゃひゃひゃひゃ、と
まるで笑い袋のように声を上げて笑ったものだ。
それはとっても嘘っぽい笑い方で、僕は厭だった。
けれど終いには止まらなくなって、
涙が出るほど笑って、それから
「なんだか馬鹿みたいね」
そう言って、ぐさりと果物にフォークを刺して
それを頬張り、普通にテレビを見たりしていた。
そういうどうしようもない過去の事を
柿を見て思い出した。

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