鍵は閉めることも開けることもできる

久保田のいいやつがあるので、呑みに来ませんか、
と友人に誘われて、日曜日の午後、彼の家に行った。
ともだちというのは、いいものだ。
しかし出遅れてしまって、たどり着いたのはかなり遅い時間だった。
混み合ったバスは、のろのろと走った。
暖かい日だったのに、バスには暖房が強く入っていて、額を汗が流れた。
友人の家には共通の知り合いが三人、来ていた。
酒の強いひとりは、すでに床に寝ており、家主の友人も相当できあがっていた。
「いや、これ飲みやすくて。だいじょうぶ、inoさんの分は取ってあるからさ」
と言って、一升瓶から、ガラスのとっくりに注いでもらうと、
とっくり半分くらいで、一升瓶は空になった。
飲んでみると、なるほどすっきりと軽い飲み口だった。
そのうちに、友人も目つきが怪しくなり、寝室に移動して寝てしまった。
なんだかねぇ。
と、僕も言ったけれど、この久保田、少ししか飲んでないのに相当効いた。
後で聞いたところによると、原酒で十八度あったのだそうだ。
それにしても、ふわりと浮き上がるような、なんだか不思議な
酔い方をする日本酒だった。

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