音楽には、ある程度隙間が必要だと思うのは、私だけだろうか。
ぎっしりと詰まりすぎているものには、ゆだねるしかない。
しかし、何かにゆだねていると、外側から満たされるものが多く
自分の本質とは離れてゆくような気がする。
何かに向かってゆこうとする力は、人の言葉ではなくて、
遠くで燃えている炎を、眺めることから始まるのかもしれない
と思ったりする。
「空気人形」というのはペ・ドゥナが主演している是枝さんの映画。
よく行くバルで、この映画のサントラが流れていた。
それが、あまりにも良くて、ユリイカのぺ・ドゥナ特集と一緒に買った。
映画は以前に観ていたが、ぺ・ドゥナの印象が強すぎて、
どんな音楽がかかっていたのか、憶えていなかった。
このアルバムには隙間が沢山ある。
どのような気分でも、入り込める心地よさがある。
BGMという言葉は陳腐だけれど、これを聴きながら書き物をしてもいいし
読書をしてもいいし、食事をしてもいい。
空白の部分を自由に使えることがいいと思う。
このアルバムには歌唱を伴う曲は含まれていないが、
一曲だけペ・ドゥナが詩を朗読している曲がある。
それは吉野弘さんの「生命は」という詩である。
「生命は//自分自身だけでは完結できないように//つくられているらしい」
という言葉で始まって、
「あなたも/あるとき//私のための風だったかもしれない」
という言葉で終わる。
美しいなと思う。