風の音

風に音なんてなくて、
風が吹くことによって震える何かが
音を出している。
だから、それを聴く人がいる場所によって
風の音は違うのだと思う。
田舎に居た頃の風の音は
森の木々が揺れる音で、
そして井戸端にかかっていた鏡が
カンカンと柱を打つ音だった。
眠りの奥の、深い場所の音だった。
今は、マンションの壁を吹き抜けて
ごうごうとただ鳴る音なので、
今、私の風の音はあまり面白くない。
よい風の音がすることろに
行きたいと思う。

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