眼鏡

九月になった。
今年は蝉が鳴き止むのが早い気がする。
発音していた全個体が亡くなって
失われたのだと考えると
秋の訪れというのは随分罪深いと思う。
眼鏡は体の一部じゃないと
誰かが歌っていたが、二本目の眼鏡を作った。
「老眼鏡」などと言うのは日本だけで
海外では「リーディンググラス」と言うらしい。
つまり読書眼鏡。
でも今回作ったのは焦点距離を少し長くして
仕事用、つまり「PC眼鏡」
お前は「目だけはいいね」と親にも言われていて
それは決して褒め言葉ではなかったけれど、
目さえも悪くなった。
母親も若い頃は目だけはよかったと
何度も聞かされた。
職場の脇を流れる広い河の向こう岸の道を
自転車で誰かが走っているのを
窓越しに眺めて「あ、川上さんだ」と
認識できるぐらいだったそうだ。
そういう母も晩年は眼鏡が手放せなかった。
季節というのは移り変わるものだ。

カテゴリー: 諸行無常 パーマリンク