記憶の雨

思い起こしてみると
記憶に残っている風景は
いつも雨が降っている。
茶色く濁った川が
ごうごうと流れていて
私は傘を差している。
晴れた日の記憶が
ドーナツのわっかのように
抜け落ちている。
トタン屋根に落ちる雨は
歌をうたっている。
そして蛙が待ち構えている。
季節の匂いが立ち込めている。
そういえばこの頃の小学生は
黄色い傘を差さないのだろうか。
堤防の上を
一列にゆく黄色い傘を
もう見ることはないだろう。

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