四月

今年は四月が来ないような気がしていた。
私の知っている四月ではない。
そんな気がする。
誰か知らない四月がそこにいて
私はどう接したらいいのか分からない。
近しく感じていたのは
たぶん私だけで
あなたはそうでもなかったのでしょう。
ただの偶然が私たちを近づけただけで
組み上げられたこの世界のことを
私はよく理解しているわけではなくて、
実のところずっと入り口に立ったまま
暗い部屋の中を見回している。
いつまで経っても目は慣れず、
耳を澄ましても何も聞こえない。
そして何の匂いもしない。
寒すぎるのは太陽のせいではないでしょう。
何かほんの少し違うことが
たくさん積み重なって
大きな流れとなって風向きを変えている。
そしてそういったことは、
私にはどうしようもないこと。
ただ時空の問題なのだ。
どの扉を開いてみても同じで
結局なにも見えない。
過去は記憶され、
未来は過去に基づいて想像される。
そういったことを手紙にしたためて
ポストに投函したいけれど、
そもそもポストなど
存在しない世界なのではなかったか。
本棚の上から
いつだって見下ろしているような存在に
なればよかった。
タイヤに空気をたくさん入れて
接地面積を小さくすることで
軽く、そして速く走ることができるのだと
誰もが知っているが
私の空気入れはどこかに穴が空いていて
踏み込む度にしゅうしゅうと音をたてて
漏れてしまう。
空を見上げるときっと一番星が輝いていて
その距離を私は胸にしまうだろう。

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