小さな地球儀を持っている。
くるくると回しながら何だか不思議な気持ちになる。
私はこんな玉の上に住んでいるのに、
地球の引力のせいで、
まるで平らなところに居るような気がしている。
年末から少しイタリアに行っていた。
「旅行は楽しかったですか」と人に聞かれるが、
何て答えたらいいのか、いつも迷う。
ひねくれているだけなのかもしれない。
しかし私はひとりでいる時に、
具体的に「楽しい」と思うのは何だか変だと
思っているようだ。
「楽しい」とは誰かと作る何かであるような気が
どうしてもするのだ。
そうやって言葉の意味の森をつまずきながら
歩くことが好きなのかもしれない。
私の場合「旅行」とは光を見にゆくことだと思う。
「観光」というのが人の歴史を味わうことだとすると
それにはあまり興味がない。
どんな街に行っても、そこは光の美術館だと思っている。
石と、壁と、水でできている街に行くと、
見たことのないような、様々な光が展示されている。
私はそれを、眺めている。
今回もたくさんの光を見た。
光は私の中に残り、様々な場面で薬のように役に立つ。
そうやって光を集めることが私にとっての旅だと思う。
それはカメラに似ている。

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