立冬

冬が暦に現れるようになると
夜は私に冷たくするようになった。
それは私のせいではないが、
暖かい南の国から辿り着いたゆえ、
私にも何らかの落ち度があったのではないかと
思ったりする。
点滅する光を、自転車に灯して夜を走ると
後方から黒い服を着た男が
黒い風のようにペダルを漕いで
私を抜き去っていった。
居酒屋には人々が集っており
住宅街からは夕餉の匂いがした。
猫はもう階段の下には見当たらなかった。

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