仕事を休むと、夏がわかる。
蝉は鳴いて異性を求めているし、
学生は自転車に乗って通り過ぎ、
日傘を差した婦人がバスを待っている。
私は季節もわからないような場所に
仕事に行っているのだろうか。
宇宙の果てのように遠い場所が
自転車で十五分の距離にあるだろうか。
サントリーの角瓶の中身を
氷を入れたグラスに少しだけ注ぎ、
ソーダ水で割ると
遠い昔の事を想い出しそうな気がするが、
実際は何も想い出さない。
テレビジョンの四角い窓の向こう側で
都知事選の候補が
演説をしているのを観ながら、
少しずつそれを飲む。
まるでバラエティー番組のように
差し障りのないことを
冗談のように彼らは述べるのだ。
社会は複雑化し、
細々とした問題が山積し、
この人達だけで手に負えるはずはないが、
目線が大変近いところに落ちていて、
行く先の事がうまく見えない。
いっそのこと全員当選させて
みんなでやってみてはどうか
などと思ったりする。
夜が更けて、雨が降り始めた。
路面を行く車の音が変わった。
そういえばまだ梅雨の最中だった。
七月が消費されてゆく。