ダイヤルする

トレヴィーゾのホテルは
ダイヤル式の電話だった。
円形のダイヤルに開いた数字の穴に指を入れて回し
それがバネで戻って番号を通知するもの。
このごろ日本ではあまりダイヤル式の電話を見ない。
調べてみると、回線自体が廃れたのではなかった。
単に「便利」だと思われる方向に
変化したのだろう。
技術が「進化」したと思われる時は
必ず何かが「退化」しているのだと思う。
我々は「ダイヤルする」という手続きを失った。
そしてたぶん「ダイヤルする」という言葉も失った。
私はあなたにダイヤルしないし、
あなたは私にダイヤルしない。
私たちはそれを望んだのだろうか。
時代、というものの要請だろうか。
「ダイヤルする」という行為の中に
何かとてつもなく意味があったような気がしてならない。

カテゴリー: 諸行無常 パーマリンク