旅について考えている。
私の棲む世界は
思ったほど暖かくなっていない。
修繕工事は続いていて
夜遅く帰ると
毎日何かが変わっている。
溶剤の匂いが低く流れている。
昨日の帰り道
上司の家の前を通りがかったら
ドイツ製の高級自動車が
黒くこちらを見ていた。
この先、思いがけないことが
どれだけあるのだろうか。
テレビをつけたら
嵐の中で男がロックを歌い
それを女が病室から見ている
ところだった。
彼女は救われたのだろうか。
救ったのは歌だろうか。
歌の向こう側にあるものだろうか。
私はテレビを消して
お茶を入れた
旅について考えていたと言う事を
私は思い出した。

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