春のゆく

たった一日で何もかもが変わってしまって、
そういう悲しみや苦しみを
吸い取るものも無いとき
川のように流れてゆく時間の音を
じっと淵に座って聞いている。
静かにしていないといけないと思う。
ほんとうは、ずっと前から少しずつ
変化していたのだろう。
どんなものも傾斜がついていて
ゆるやかにおちてゆく。
私はいつもそんなことに気付かない。
だから選択肢は
受け入れるということ以外にない。
今日も少し風がでていた。
池の水面が縞模様を描いていた。
緑がさわさわと揺れていた。
喫茶店は混み合っていて
平日の昼間だということを忘れそうだった。
たぶん四月の物語を
歩いているところだ。

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