夜について

夜はもっと静かで
夜はもっと冷たく
夜はもっと個人的で
夜はもっと秘めていた
そう思ってきた。
酔った深夜の路上で
ふと気付くと私は
夜からはみ出していた。
夜はもう私のために存在しない。
裏切ったのか
裏切られたのか
夜が遠ざかったのか
私が遠ざかったのか
分からないけれど
とにかく明らかに
離れてしまった。
ただひとりの理解者であったはずの
私の夜はどこにもなかった。
ただ人工的な灯りが
どこまでも続く
アスファルトの道の上に
私は立っていた。

カテゴリー: 諸行無常 パーマリンク