小春日和

南側のサッシに陽が当たると
彼は、メキ、メキ、と声を上げる。
あれは、伸びをしているんだよ
と私の中の誰かが言う。
人間の形をした私もまた
ベランダで伸びている。
太陽というものはそうやって
様々なものを伸ばすのだろう。
冬の間に
そのような日が何度かやってくる。
もうだいぶん散ってしまった
イチョウの木のことを
少しだけ考えた。
誰もがほんの少ししか考えない。
最初から片隅というものが
指定席として用意されている。
私は熱いお茶を入れて
掌で包み込むように
湯飲みを持っている。

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