レディオ体操

レディオ体操が
ダンスのように見えてきた。
だってあれは最初からダンスじゃない
という人がいるかもしれないけれど
「体操」という言葉が
芸術的な側面を剥ぎ取って
医療的な何かのように
見せていたものだから私は
勘違いしていたのかもしれない。

朝、自転車で通りがかると
その工場の従業員は
いつも同じ時間に建物の前に出て
レディオ体操をしている。
男も女も
若人も年寄りも
二列で向かい合って
レディオ体操第一。
みんな無表情でゾンビのような顔をして
嫌々こなしているように見えるが、
踵が伸びている。
異様に切れるのである。
それは踊りの一団である。
ジャクソンマイケルの
スリラーの踊りをちょっと思い出して
何だか可笑しくなる。

ずっと見ていたいのだが、
そこに停まって眺めるわけにもいかず
私はその工場を通り過ぎる。
明日の朝は私も
レディオ体操を踊ってみようか
などと思いながら。

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