立冬である。 私は冬を 呼んだ覚えはないけれど、 冬は呼ばれなくとも勝手にやってくる。 そして雨が降っている。 それは出遅れていることの しるしなのかもしれない。
小さい頃は夜が好きだった。 ほんものの夜だったからである。 都会の夜は偽物の夜だと思っている。 夜は暗く 誰も起きてはいなかった。 風が吹いて 納屋の古いトタン屋根がばたばた音を立てた。 ざわざわと裏山がいっていた。 夜の作法というものが 山間の場所にはあるのだった。
そういう夜を 私は置いてきた。