川を見に行く

遠い街に行っていた。
時計を七時間巻き戻して
今日をやり直す。
高台に登ってアディジェ川を見た。
太陽はまだ、光を強く放っていたけれど、
もう建物の影が川に落ちていた。
なぜ行くのですか
人はそう問うけれど、
私にはどんな時も答えがない。
馬鹿だから答えを用意しようと思わない。
利口な人はいつも答えを持っている。
そうして物事を綺麗に箱におさめて片付ける。
納得とはそういうことかもしれないが、
自分の行いに意味付けすることが
私にとっては正しくない。
遠い街にも月が昇って
人々はそれを見ている。
紀元前からある円形劇場の前の広場で
空を見上げながら酒を飲んでいる。
沢山の声が風に紛れてゆく。
私はその中を
ひとりで歩いてゆく。

カテゴリー: 諸行無常 パーマリンク