グリンピース

空気はネクターのようにねっとりとしていて
また雨の季節が近づいているのだと知る。
月は丸さを取り戻しつつあり、
薄い雲の向こう側から私を覗き込んでいる。
野菜の値段は高くなったり
安くなったりして、
それが天気に左右されているのだと分かる。
生きているものは、工業製品のように
作ることはできないのだろう。
春が熱に冒されて去る前に
グリンピースのご飯を作りたかったが、
スーパーのどこにも
今年のグリンピースは存在しなかった。
野菜の旬というのは
人にとっては僅かな時間の隙間なのだろう。
私は仕方なく
綺麗に磨かれた硝子の向こう側の
冷酷な世界からグリンピースの袋を取り出して
オレンジ色の籠に入れた。
私にとって冷凍食品はいつも
思いつきで買って、ろくに使わないで
冷凍庫の中で乾燥する運命にあるのだけれど、
これはすぐに使うつもりだから
よしとしようと私の中身が言った。
深夜のスーパーはほとんど人がおらず、
冷気に満たされ
ただ煌々とそこに存在していた。

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