Sounds good

LUXMAN L-550AX

しばらく前にオーディオアンプを新しくした。
以前のものは棄てた。
それは阿佐ヶ谷の駅前にあった電器屋で
確か三万円台の後半くらいの値段だった。
私は音楽に頼って生きている。
そういうことをふと思い出したのだ。
いつまでも時々左右の音が出なくなったり、
ボリュームがガリガリといったりする
そんなアンプを使い続けてはいけない。
それが重要なものならば。
生命というのは節約できないのだから。
そういうふうに思った。

よい音、というのは人によって違う。
それはとても個人的なものだ。
ノイズが少ないことではない
高域が素晴らしく出ることではない
私にとっては。
まるく、ふとく、のびやかな
音がすることなのだ。
そういうアンプを買った。
たぶん楽器を買うようなつもりで。
宅配便の若い青年は横縞なポロシャツを着ていた。
「んぁっ」
アンプの箱を台車から降ろす時、
彼は妙な声を出した。
「重いっすよこれ」
確かに、箱に入っている状態では
二十八キログラムくらいあるからな。
私は何も言わず伝票に印鑑を押した。

ひとりで設置するのはなかなか大変だった。
こういう時、限りなくひとりである。
しかしそれは美しい音を持っていて
わたしをねぎらった。

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