五の月

moon

ヴェネツィアでは猫をあまり見ませんでした。
それは猫がいないということではなくて、
単に私が出会わなかったということです。
水辺に佇む猫は魚のことを考えるでしょうか。

五月というのは
今年になってから
五番目の月だということで
一年という時間がもう半分に近いくらい
進んでいることに
私はずいぶんと驚いています。

いつの間にか月は丸くなっていて、
明るく空に昇っているのです。
私はヴェランダからそれを見上げていました。
風の強い日でした。
南風になったり
北風になったり
めまぐるしく風向きは変わって
そのたびに違う部屋のカーテンを膨らませました。
通り抜けていることは
確かなのです。

私は部屋を少し片づけました。
何袋ものごみを集積場に運びました。
そうして私が作ったものは余白です。
余白を持つことが私には必要だと思います。
余白を設けることによって
想像というものはできるものなのだと
私は知っているのです。

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