過放電

「バッテリーが上がった」というのは
間違った表現ではないかと思う。
下がった」のではないかと思うのだ。
電圧って下がるものでしょう。
あるいは失った、といってもいいかもしれない。
電気ってそういうものでしょう。
小さな池に溜められる電気などすぐに放たれてしまう。
科学というものは損なうことを止められない。
それで私はスパナでナットを回し、
ターミナルを引き抜いて、
バッテリーを車体から取り出した。
充電をしようと思って。
無くなったものは注げばいいのでしょう。
ネットワークの網の中から言葉を拾い集めてみると、
人々は寿命があると言っている。
知っている。
全てのものに寿命というものがあって、
いつか損なわれる。
この星でさえそうなのだから
それはとても宇宙的なことなのだろうと思う。
しかし今はただ充電を試みて
ほんのひとときの復活というものを願っている。

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