装う

冬は装いの街。
風が吹けば風の
しんと冷えればしんとした
装いが街を流れてゆく。
喫茶店でひとり
珈琲の黒い表情を伺って
それを見ていた。
暮れてゆく街には
つがいの人達が多かった。
通りの向こう側のパブは
午後の早い時間から開いている。
正しいな、と思う。
夜は、誰のためにあるわけではなくて
誰ものためにあり、
そして人々は
眠りに落ちなければならない。
そこの角で誰かがアコーディオンでも弾けば
パリのようだろうか。
パリに行ったことはないのだけれど。

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