線による伝送

テレビばっかり見ていると馬鹿になる。
小さい頃そんなことを言う大人が多かった。
しかしその理由を誰も説明できなかった。
私は今頃になって
その理由が何となくわかってきた。
馬鹿になるというのではなくて、
人に想いを伝える力が損なわれるのではないだろうか。
自分の思っていることを言葉にすることが、
困難になってゆくのだと思う。
絵を見て、どんな絵なのか
言葉で説明し、伝えることは難しい。
目に見える世界というのは立体的で
パラレルなものだけれど、
言葉にするということは、それをシリアルに
変換してゆくことだからである。
つまり、一文字ずつ言葉を綴って
順番に説明してゆくということ。
「面」ではなく「線」によって伝えることだから。
当たり前のことに思えるけれど、
SNSにポストする画像のみで
想いを共有した気になっていて、
実は自分の思っていることなど
あまり伝わってはいなかったりするのでは
ないだろうか。
映像で誰もが即座に想いを伝えられる技術は
まだ当分整わないだろう。
本を読んだり、ラジオを聞いたり、人と話すのは
知識や情報を受け取るためだけではない。
「線」によって伝えたり受け取ったりする
練習なのである。

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