30ml

隣の席に上司が座っている。
彼は同い年である。
朝、私と彼は別々の場所で
同じ麦茶のペットボトルを買ってくる。
この頃、お茶のペットボトルというのは
増量競争をしているようだ。
私の買うペットボトルには「増量600ml」と書いてある。
500mlのペットボトルは500mlの意味があったはずだが、
「増量」してある方が売れると判断した
あるいは実際に売れることが分かった飲料メーカーは
そのような意味を無視して、あるいは変えて
600mlに増量して売るのである。
上司の机の上にある麦茶のペットボトルには
「増量630ml」と書いてある。
同じメーカーの同じ種類麦茶のペットボトルであるが
私のペットボトルよりも「30ml」だけ多いのである。
「それ、どこで買ってくるんですか?」
私は訊いた。
私はいつも駅の自動販売機で買う。
「これ? これは駅の改札横のコンビニで買ってくるんだけど」
上司はそう言った。
それが私と、上司の差である。

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