大木

空気が変わったから、
帰り道を少し歩くことにした。
冷たさをまとって歩くのが苦手だった。
夜になると
あらゆるものの色は消えて、
ただそこに道だけが伸びている。
住宅街の真ん中に交差点があって、
信号機が夜に色を添えている。
その交差点の真ん中に大きな木が立っている。
道はその木を迂回するように
木に沿って周り、そしてもとに戻っている。
交差点が蛇行しているのだ。
道を整備した時に
なぜその木を切り倒さなかったのかは分からないが、
私はその蛇行したおかしな交差点を渡って、
また住宅街の中を南に下る。
人は少し変わった道を歩く必要があるのだ
と毎日そこを通りながら思う。
通り過ぎた時、自分の中の何かが変化して
はっとするような気持ちが流れ出したりする。
もしもその大木が切り倒されて、
道が真っ直ぐになってしまったら、
そのようなこともないだろう。
私は今日も曲がった道を歩いている。

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