二月の径

寒い日が続く。
縦縞から吹き出す冷たさは
リアリティを含んでいる。
吹き消されないように覆いながら
歩く街の風景は
硬質な気持ちでできている。
指先で触れる硝子の板は
冷たさを増しているだろう。
スマホ対応の手袋など
私には必要がない。
それは独り遊びでしかない。
暖房を停止すると、
今夜も風の音がする。
北側の窓越しに
それを聴きながら
私は眠るのだろう。
麦酒を一缶買ってきた。
それはスーパーの棚にあった。
新製品というラベルが貼ってあった。
しかし、それは
私にとって妙な味だった。
新しいものがみんな良いわけではない。
ただ手を伸ばす力を
持っているだけだ。
一目見れば分かったと思うけれど、
多くの場合それは正しくない。
身体的な感覚が伴わないことは
具体性に欠けるから。
風呂上がりの体を、
すこし冷まして、
それから眠ろうと思うのだ。

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