地蔵

こんばんは。
私は町の外れに立っている地蔵です。
石でできています。
雨の日も晴れの日も、雪の日も
ずっと同じ所に立って
ぼんやりと世界を見ています。
時々、好きなひとができて
愛を伝えようとするのですが、
地蔵のなまめかしさは
受け入れることができないようで、
「きゃっ、やめて」と彼女は叫んで
突き飛ばしたりするものですから
私は頭がはずれて
その辺にごろりと転がってしまったりします。
しかし、血が出たりはしません。
なにせ石ですから。
ただ静かに悲しみというものがやってきて
飽きるほど空を見ているだけです。
しばらくすると、誰かがやってきて
頭を元通り乗せてくれて
そして、また石の地蔵として
町のはずれに立っています。
私は業が深いのだろうか
と、時々思いますが
ぼんやりしているので
何もかも忘れてしまいます。

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