雨に叫ぶ

ずっと昔、少しだけインドにいたことがある。
その時、こんな感じだった。
夕方になると空も土も赤いのだけれど、
遠くに稲妻の光がくっきりと見えて
その黒い塊のような雲が
どんどんこちらにやって来る。
やがて辺りは土砂降りの雨になる。
傘など役に立たないから
人々は軒先でスコールが通り過ぎるのを待っている。
時々雨は夜通し降り続いて
何もかも濡らすのだけれど、
翌朝、陽が昇ると辺りは刺すような光で満たされ、
灼熱の一日が始まる。
濡れては乾き、乾いては濡れる。
そういう日々が延々と繰り返される。
果てしなく続くように感じられる。
三つ以上の数を数えることはできない。
それはひとつの永遠のようなものである。
ミニマルチックでもある。
そして、うんざりする。
うんざりするけれど、それが日常であるから
その中で生きてゆかなければならない。
当たり前の地獄というのは、
そういうものだろうと思う。
気付くとそういうことが、私に突き刺さっている。
逃れることはできない。
一度開いた扉は閉じられない。
距離というものがあるかぎり
安定はやって来ない。
そんなこと、知っているけれど。

カテゴリー: 諸行無常 パーマリンク