にちじょう

寒いような暑いような
そうでもないような
何だかよく分からない気温で、
窓際の鹿島くんは
窓を開けたり閉めたりしている。
流入する空気は
ひんやりしていて、
外が冷たいのか
それとも中が暑すぎるから
そう感じるのか分からない。
はっきりしていることは
眠いということだけだった。

些細なことで、気分が
浮き沈みしてしまうのは
何もかもが些細なことで
できているからだろう。

隣の席の望月くんが頭を抱えていた。
どうしたの? と訊くと
「メモリがね512バイトしか無いんだよね」
と言う。
「え、バイト? キロバイトじゃなくて?」
「いや、全部で512バイト。
 どうやってプログラミングしたものか
 と思って」
なるほど、無理難題というのは
そこらに散らばっている。

熱いエスプレッソを
かぷ、と飲みたい所だったが
もちろんそのようなものは無かった。
小銭入れからコインを出して
紙のにおいがする珈琲を啜った。
カップの縁に付着した原液が
指にねとねとと付いて、不快だったので
洗面所で洗った。
目の前の鏡に映っている男は
何だか風呂にのぼせたような顔をしていた。
馬鹿っぽいよ
と私は小さな声で言ってみた。

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