科学

巨大なイカが居たら
大変な驚きらしい。
小さなガラスの板に向かって
喋ったり、擦ったりしている人々にも
まだ驚きは残されている。
科学によって、理屈が分かっていないことは
全てが驚きなのだ。
逆に考えると、科学というものは
この世の中から驚きというものを取り除いて
当たり前のことに変えてしまう魔法のようなものだ。
私は小さい頃、科学者になりたかった。
試験管やシャーレやフラスコやビーカーの
透明な宇宙の中で発生する事象を
祈りを込めて見守りたかったのだ。
そういう事を求めていた。
生業ではなくて。
クライアントやスケジュールやコストといった
黒い霧のようなことを
考える必要がなかった頃のことだ。
応用して一般化して便利な物を
作りたかったわけではない。
ただ目の前で起きていることを
見たかっただけなのだ。
そして測りたかったのだ
自分との距離を。

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