月は冷たく冷えていた。
私は手袋をはめて、
そっと手を伸ばしてみる。
もちろん林檎狩りのように
月を手に入れることはできない。
それは温度の問題ではなくて、
距離の問題だからだ。
分かっているようで
分かっていないことは沢山ある。
しかし、分からないからいいことも、
何だか分かりそうな、
もしかしたら、分かったかもしれないと
時々思えるようなところが
いいことだってある。
正解なんかどこにもありはしないのに、
多くの人が正しいということが
正しいと思うようになった。
それが良識というものですよ
と、誰かが言う。
確かに、はずれていないと、本人も
周りの人も思っているならば、
それはその人のルールだろう。
しかし、すでに軌道を随分はずれて
宇宙の外に飛び出そうとしている星にとって、
次第に太陽から遠のいて
暗くなってゆく過程において
そういうルールが何になるだろう。
時々そうやって
自己弁護を試みるが、
うまくいったことは一度もない。