夢のことを話す人

とても聴きたいCDのケースを開けると
ディスクが入っていない
ということがよくある。
探しても探してもディスクは見つからず、
随分経ってから、別のCDを聴こうとして
ケースを開けた時、それが入っていたりする。
そういうちぐはぐさを
夏に感じる事が多くなった。

ゆうべ見た夢のことを
話す相手が欲しいと時々思う。
夢のことはすぐに忘れてしまうから
よっぽど近くにいる人でないかぎり
見た夢の細部を話すことはできない。
氷のようにとけて、消えてしまう。
夢の賞味期限はとても短い。

電車の中で眠っていた。
久しぶりに会社に行ったから
何だかとても疲れたような気がした。
もしかしたら
単にぐうたらなだけかもしれないけれど。
下りる駅で目覚めた。
夢は見なかった。
ぼんやりとした頭のままで、
慌てて電車を降りた。
たとえば僕が、電車に座ったまま
心筋梗塞とか脳梗塞とかそういうので
死んでしまったとして、そうすると
今のように目覚めることはなくて
そして何も無いのだろう。
目覚めるってことは、自分というものに
戻ってくるということだから、
とても尊いことなのかもしれない
などと、電車の赤いテールランプを
見送りながら思った。

カテゴリー: 諸行無常 パーマリンク