曲がる

ペンを落としました。
インクを入れてから
ペン先についた汚れを拭おうとした時でした。
ぐにゃりと曲がったペン先を
呆然と眺めていたら、
悲しみがやってきました。

悲しみというのは、
色々なものの蓋を開けてしまいます。
喜びは、逆に蓋を閉めるものなのでしょう。
「君は僕とは違うから」
幼い日、友達はそう僕に言いました。
その事をなぜか突然、思い出しました。
「えっ、何が違うの?」
そう訊こうと顔を上げた時には
もう友達は目の前にいませんでした。
「何が違うの?」
今でも、僕はそれを問いたいのです。
しかし、それはきっと
その友達にではなくて、自分にかもしれません。
いえ、もう分かっているのです。
近づけば近づくほど
自分は相手と違うと思うようになることを。

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