悟り

「真理」みたいなものは
歳をとって、ある日突然発見する。
そうか、なるどそうだったのかと思う。
なんで僕は今までこんな簡単なことに
気づかなかったんだろうとびっくりする。
それで年寄りは若人に言うのだ。
「きみね実はこういうことなんだよ」
などと得意になって説明するのである。
自分がこの歳でもしこれがわかっていれば、
人生はどんなに豊かだっただろうと思いながら。
しかし若者の顔は微妙に歪んでいる。
「はぁ」と虚な声が響くだけなのである。
年寄りの驚きと発見は年寄りのものなのである。
若い時に知っていればと思うかもしれないが、
若い時に知るには、若い時にそのように
体ができていなければならないのだ。
「悟り」というものには形がない。
だから説明することは不可能なのだが、
その時に得た自分の悟りを
言葉で説明しようとするとき、
それは単に長い物語であり、他者にとっては
ただ退屈なだけなのである。
年寄りはその悟りをギターで弾けばよい。

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