アナログ

技術者は常に安定した結果を求める。
故に現在のディジタル技術は
どんな時でも誰がやっても
常に同じ結果が得られるように
設計されていて、実際そうなる。
音楽のプレイリストもそうで、
誰が作って誰が再生しても同じになる。
しかし「同じ」ということが
「すばらしい」と思える期間は限られていて
だんだん「つまらないな」と思うようになる。
そう
そこには「個性」というものが無いからだ。
どこのセブンイレブンにも
同じおにぎりと同じ飲み物が置いてあり、
それは安心で便利ではあるけれど、
わくわくしないし、面白くもないのである。

先日、カセットデッキを修理した。
オーディオカセットデッキというのが
正しい呼び方だろうか。
「カセットテープ」というものを
見たことがある人は少なくとも
三十歳は超えており、
使ったことのある人は四〇歳を
超えているだろう。
自分は二十六年程前に買った
カセットデッキを持っている。
カセットデッキの販売を各社がやめる頃に
買ったので最終版的な機種である。
もう何年か調子が悪くうまく再生できなかった。
テープの走行がおかしくて、再生すると
ぐちゃぐちゃに絡まったりしていた。
途方に暮れて何年も放置していたが、
個人で修理している人をネットで見つけて
直してもらった。
メーカーではないので、うまく直るかどうか
そのあたりはかけである。
テープを送り出すピンチローラーや
キャプスタンモーターやベルトといった
駆動系は機械の領域だし、
モーターの制御や磁気ヘッドからの
信号の調整はアナログの電子技術だろう。
複雑で難しく出来た装置なのである。
今のところ、正常に動作している。
カセットテープに録音して聴くということは
アナログなことである。
色々な要素を調節しなければならない。
テープの特性に合わせた調整、録音レベル、
タイミング、曲間の空白時間など
つまりこれは「レコーディング」なのである。
誰がやっても同じにはならない。
そういうことがアナログオーディオの
愉しみなのである。

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