夢の夢

ぼんやりしているうちに
七月も半分過ぎてしまって
林では蝉が鳴いており
体温くらいの気温が続いたりして
間違いなく夏なのである。
しかしどうも私は
これを夏だと認めたくないような
そんな気持ちを持っているようだ。
人工的に作られた舞台装置で
強いライトがあてられていて
何か台詞を言わなければならないが、
私は台詞を忘れてしまって
ただ客席の方を見ている。
客席には誰も見えない
たぶん強いライトのせいで目が
おかしくなってしまったに違いない。
そんな心持ちである。
そのくらい現実世界と心が
離れてしまったのではないか
そんなことを言ってみるが、
いまはもうどんな人ともそういう事実を
共有することはできないかもしれない。
つまり季節って温度のことではないと
私は思っていて、温度以外のあらゆる
瑣末なことをテレビのニュースが
掃除機のように吸い取ってゆく。
このごろ長い夢をよく見る。
もしかしたら、夢はずっと続いていて
これも夢の中なのかもしれない。
夢から覚めたら、私は小学生だろうか
それとも老人だろうか。
とにかく冷たく冷やした麦茶を一杯
飲んでみることだ。
そうすればきっと分かるだろう。

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