帽子

イタリア人はみんな
きっと素敵な帽子を被っているだろう。
そう思ってイタリアに行ったが、
ほとんど誰も被っていなかった。
たまに見かける帽子の人は旅行者ばかり。
日本人は歳を重ねると帽子を被るようになる。
これはだいたい太陽ではなくて
人の目を遮るためである。
みすぼらしくなった頭部に注がれる視線を。
イタリア人はそもそも
歳を取ったということを
みすぼらしくなったなどと
思ってはいないのだろう。
だから帽子で遮る必要もないのだ。
世の中に対する自身の存在価値が
少しずつ損なわれてゆくように思えるのは
自分たちが作り上げた世界に自信が
無いからではないかと思う。
自慢できる舞台装置を
後世に残さないとね。

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