物を大切にする

日本人は物に魂が宿ると思っている。
つまり、物は物ではなく魂なのである。
だからそれをぞんざいに扱うわけにいかない。
そういう価値観を持っていると思う。
それが物を大切にする理由である。
「品質」というのは魂を作り込むことで
そこが日本製であることの重要性なのだ。

この頃うちの洗濯機が暴れるようになった。
脱水の時、ガタンゴトンと
ありえないくらい大きな音がする。
メーカーに連絡して修理に来てもらった。
「ドラムを吊っているバネを止める受けが
 割れてしまっていますね」
サービスマンはそう言ったが続けて
「残念ながらこの部品はもうないので
 この洗濯機は修理ができません」
そう言った。
洗濯機の部品保有期間というのは
製造終了後、六年なんだそうだ。
「この洗濯機は2011年製ですからね…」
と彼は何とかならないかと願う私に
当たり前のことを言っているように言う。
結局、一万円払って診てもらっただけで、
彼は元通りにカバーを閉じて帰っていった。
小さなプラスチックのフックがない
という理由で、私はこの魂を葬らなければ
ならないという。
洗濯機がかわいそうだ、と私は思う。
新しい物を作り、たくさん売り続けなければ
企業が存続できないということの代償に
物の命は短命に制御されている。
せめて、食べたらなくなるお菓子のように
使う度に減ってゆけばいいのに
そう私は思った。

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