雨季

六月になると
空から雨が降り続き
世界が水色になってゆくだろう。
そう思っていたが
今年の六月は少しイメージが違う。
世界はエンターテイメントではないから
思った通りに物語は進まない。
魅せ場は適切に配置されてはいない。
午睡の中で私は
蛙の鳴き声を聴いた。
見渡す限りの水田に
水がはられて
若い稲が育つ六月の夜
おびただしい蛙が鳴いている。
それは通奏低音のように夜を支え
私を季節とともに運んでゆく。
それは夢であった。
しかし、かつて私は実際にその声を聴いた。
確かなこともまた夢である。
どんなことも夢になるのだろう。
同じことだ。
そんな気がしている。

カテゴリー: 諸行無常 パーマリンク